解決策を探る

2030年の横浜を変える――新聞記者と参加者がともに考える、「未来メディアキャンプ」2日目

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さまざまな社会課題に対し、ワークショップやフィールドワークを通じて新聞記者と参加者がともに解決策を考えるイベント「未来メディアキャンプ」(主催:朝日新聞社×慶應義塾大学システムデザイン・マネジメント研究科、特別協力:横浜市、富士通エフサス、運営協力:Think the Earth)。
1日目に引き続き、11月19日に開催された2日目のワークショップの模様をレポートします。

 

1ヶ月にわたるフィールドワークの共有と、さらなる分析・検証

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プログラム1日目を終えてからの約1ヶ月間、横浜市が提示した7つの社会課題に取り組む7チームは、それぞれ仕事や学業の合間を縫ってチームミーティングやフィールドワークを行い、仮説の検証を重ね続けてきました。

 
2日目のプログラムは、各チームがフィールドワークの共有を行うことからスタート。外国人観光客への街頭インタビューを行ったチーム、企業や自治体への取材を行ったチーム、地域のイベントに実際に参加してみたチーム……。フィールドワークの内容は実に多岐にわたります。

 
さらに、ソリューションを拡張させるため、1日目でも実施したバリューグラフの作成やステークホルダー分析も改めて行いました。フィールドワークを経たことで、どのチームの分析もより具体的になり、議論もさらに活発化していました。

アイデア評価の基準は「革新性」「実現性」「メディア活用の有効性」

そしていよいよ、プログラムの最後には7チームによる課題解決アイデアの最終発表が行われました。

 
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神武直彦准教授は、アイデアに期待することとして「革新性」「実現性」「メディア活用の有効性」の3つを挙げます。神武准教授と4名の審査員(博報堂ケトル代表取締役社長 嶋浩一郎さん、キリン株式会社 執行役員ブランド戦略部長 坪井純子さん、横浜市政策局政策調整・データ活用推進担当部長 中村俊介さん、朝日新聞社コンテンツ戦略ディレクター 藤谷健)が、この3つの視点で各チームのアイデアを審査し、「未来メディアキャンプ賞」のほか、革新性を評価する「クリエイティブ賞」、実現性を評価する「みなとみらい賞」、メディア活用の有効性を評価する「メディア賞」がそれぞれ決まりました。

 
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(別室で行われた審査会の様子)

それぞれのチームが最終発表で提案した課題解決アイデアを、受賞結果とともにご紹介します。

社員のやりがいを見える化するツール「ヤリガイガー」

チーム:わくわくワーク

 
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「新しい働き方で横浜を元気にするには?」という課題に取り組んだチーム・わくわくワーク。新しい働き方を実現するためには、組織や“忖度”の壁を取り払うソリューションが必要、と訴えます。

 
わくわくワークが提唱したのは、社員のやりがいを見える化するための、「ヤリガイガー」というツールの活用。具体的には、社員が仕事を終えて会社のパソコンをシャットダウンする際、戦隊ヒーローのような「ヤリガイガー」というキャラクターのボタンの中から自分のモチベーションに合った色のボタンを選ぶというシステムです。もし“ブルー”や“ブラック”といった色が選択されていれば、その社員はモチベーションが低い状態であることが分かります。

 
このツールを1社だけでなく複数の会社が導入し、社外の人も自由に見られるようなオープンなプラットフォームにすることで、現場の意見に耳を傾けなかった上層部にも問題意識が生まれる、というアイデア。

 
藤谷記者からは、「負のエネルギーを正のエネルギーへと転換する発想が面白かった」とコメントが寄せられました。

リノベのアイデアを募るプラットフォーム「リノベポート関内」

チーム: Remix

 
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ターゲットを関内地区に絞り、「空きオフィスを利用して横浜をリノベーションするには?」という課題に取り組んだのはチーム「Remix」。“リノベポート関内”というオープンなプラットフォームをWeb上に作ることで、関内地区内外に住む人たちからリノベーションにまつわるアイデアを広く募集するというアイデアを提案しました。

 
坪井さんはこのアイデアを、「横浜は、外の力を取り込んで積極的に自分のものにしてゆくという力がある都市。横浜らしい課題解決策と感じた」と評しました。

“保育園落ちても案外OKだった”と思えるサポートを

チーム:良子育守(ヨコハマ)

 
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「横浜を子育てにやさしい街にするには?」という課題に対するソリューションを考えたのはチーム「良子守育(ヨコハマ)」。
“保活”に失敗し、育休の延長や離職によってキャリアを分断されてしまったり、初めての子育てに不安を覚えたりしている共働きの夫婦のために、横浜市がキャリアや子育てに関する悩みをサポートしてくれる事業者を紹介するしくみ「横浜トランポリン」(通称ハマトラ)を提案しました。

 
「保育園には落ちたけど、案外OKだったよね」としなやかに生きられる社会を作りたい、というメッセージが込められているこのアイデア。発表に用いたスキット(寸劇)の完成度の高さとユニークさから、この日一番の笑いを巻き起こしていました。

【クリエイティブ賞】老人ホーム×婚活で、高齢者と若者に接点を!

チーム:Rurareru

 
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“ひらく、つながる、ささえあう”。そんなコンセプトを掲げ、「地域での福祉サービスを発展させるには?」という課題に取り組んだのがチーム・Rurareruです。

 
Rurareruとは、「助ける、助けられる」に由来しているそう。若者と高齢者が気軽に“助け合う”関係を作るために、老人ホームで婚活イベントを開催するというユニークなアイデアを提案しました。午前中は婚活パーティーの参加者が老人ホームの手伝いを行い、午後は老人ホームの利用者が婚活パーティーの準備といった手伝いを行うことで、「高齢者とどう接していいか分からない」という若者の悩みと、「高齢であっても社会参加がしたい」という高齢者の悩みを同時に解決します。

 
Rurareruのアイデアはその革新性が高く評価され、見事クリエイティブ賞を受賞しました。

【メディア賞】“自転車”を通じて横浜を元気に

チーム:スポーツだけじゃないぜ!

 
「スポーツを通じて横浜を元気にするには?」という課題に対し、“自転車”を活用したソリューションを提案したチーム「スポーツだけじゃないぜ!」。すでに日常的な風景として街に馴染んでいることに加え、上手い下手があまりなく、性別を問わず乗れる乗り物という理由から“自転車”に着目したと語ります。

 
「スポーツだけじゃないぜ!」が提案したのは、カップルでアシストし合って走れる、ヘッドセットをつけて走ることで昔の横浜の風景を体験することができる……など、体験価値のある“おもしろ自転車”を多数作り、横浜市で提供すること。このアイデアには、藤谷記者から「新しい価値を生み出すための触媒という視点で言うと、“自転車”がメディアになっていてとても新しいと思った」というコメントが寄せられ、見事メディア賞を受賞しました。

【みなとみらい賞】農地を“ショールーム”化して消費者にアピール

チーム:サエグサショージ

 
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農業の担い手が減りつつある横浜。どうすれば農業で横浜を元気にできるか。そんな課題に取り組んだのは、チーム「サエグサショージ」です。

 
チームメンバーである三枝さんは、横浜市に住む祖父が持っている農地を活用できていないという悩みを実際に抱える、この課題の当事者のひとりです。フィールドワークを通じ、横浜市内には農地が点在しているものの、売買には規制がかかっているなど、新規参入には少しハードルが高いことが判明しました。そこで「サエグサショージ」は、三枝さんのようにすでに農地を持っている若者が気軽に農業に参加できるようにするには、という課題に対するソリューションを考えることにしました。

 
「サエグサショージ」が提案したのは、「ショーファーム」というアイデア。農地を、企業が新しい技術や品種をアピールするための“ショールーム”に見立て、技術力を持った企業と農地を持つ人を自治体が結びつけるというしくみです。 農地は企業の力を借りて最新技術を活用することができ、消費者へのアピールにもつながると考えました。

 
このアイデアは、その実現性が評価され、見事「みなとみらい賞」を受賞。坪井さんは「これからの農業はいかに付加価値を付けられるかにかかっている。他の農家も巻き込んでいければ、さらに次のステージが見えてきそうだなと感じました。ぜひ日本の農業を引っ張っていってほしい」とコメントしました。

【未来メディアキャンプ賞】外国人旅行者を新聞記者に!「No Interview, No Travel」

チーム:ゆとり世代

 
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「訪日外国人を横浜でもてなすには?」という課題へのソリューションとして、外国人旅行者に“新聞記者”になってもらい、横浜の魅力を発信してもらうというユニークなアイデアを提案したのがチーム・ゆとり世代です。

 
街頭インタビューを行った結果、外国人旅行者の間には「日本人はシャイな人が多く、あまりコミュニケーションをとれない」、「表面的、受け身な観光をしている」といった課題があるとチーム・ゆとり世代は語ります。

 
そこで、外国人旅行者に対し、「なぜ日本最大の中華街が横浜にあるのか?」といった“問い”を用意。その答えを探すために外国人旅行者が横浜市民と交流し、得た情報をWeb上で読める“記事”にすることで、濃密な旅行を体験してもらいながら横浜の魅力を発信してもらうというのが「ゆとり世代」のソリューションです。よい記事、ユニークな記事は新聞の地方版に掲載する、といった展開も想定しています。

 
「ゆとり世代」のアイデアは、そのユニークさが高く評価され、審査員の満場一致で未来メディアキャンプ賞に決定しました。中村さんは、「インバウンドでの発信力の低さは、横浜市にとって大きな課題。外国人旅行者をハブにして横浜市の魅力を伝える、という今回のアイデアは、そのほかの取り組みの効果が増すことも考えられる素晴らしいアイデアでした」と評価しました。

横浜市から世界へ、アイデアを広げたい

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「今回の課題解決アイデアが、横浜市から全国、世界へ広がっていけばいいですね。また反対に、世界から日本へ、そして横浜へと、新たな課題を持ち込んでほしい。
今回皆さんはさまざまな観点からのアプローチを行ってくれましたが、7つのチームのアイデアは決してバラバラではなく、すべて少しずつ関係し合っています。自分たちのチーム以外のアイデアにも、ぜひ関心を持ってみてほしいです」

 
第4回の未来メディアキャンプは、神武准教授のそんな言葉で幕を閉じました。

 
優秀なアイデアは、クラウドファンディングサービス「A-port」での出資が募られたり、朝日新聞社主催でイベント化されたりする可能性も秘めています。次回の未来メディアキャンプでも、革新的なアイデアの数々が生まれることを期待します。

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