解決策を探る

2030年の横浜を描いてみよう! 「未来メディアキャンプ」1日目がスタート

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第4回となる「未来メディアキャンプ」(主催:朝日新聞社×慶應義塾大学システムデザイン・マネジメント研究科、特別協力:横浜市、富士通エフサス、運営協力:Think the Earth)の1日目のワークショップが2017年10月22日、横浜市の「富士通エフサス・みなとみらいInnovation & Future Center」で開催されました。

 
今回の未来メディアキャンプには、一般応募で書類選考された20代から40代中心の男女35名が参加。7つの社会課題テーマごとにチームを構成し、ワークショップやフィールドワークなどを通して各チームに入る朝日新聞記者と一丸となってソリューションを探ります。今回は、そのプログラム1日目のワークショップの模様をレポートします。

 
朝日新聞社の7名の記者が提示した7つの社会課題はこちら

横浜市のリアルな課題×「SDGs」の視野で、より具体的・革新的なアイデアを

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(横浜市政策局共創推進室の関口昌幸さん)

 
4回目となる今年の未来メディアキャンプは、みなとみらいをワークショップ会場に、横浜が直面する具体的な社会課題の解決アイデアを探る、という新しいフェーズに入りました。

 
できるだけ具体的事象を想定しながらアイデアを創出し、実際の街づくりに役立ててもらえるようなプログラムでありたい――。
プログラムにそうした願いを込めるのは、毎回、モデレーターを務める慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科(SDM)の神武直彦准教授。

 
その神武准教授が目を向けたのは、母校の日吉キャンパスが立地する横浜市。横浜市は373万人が暮らす、東京に次いで人口が多い大都市ですが、1990年代後半からは30歳~65歳の転出が増え続けており、2025年には高齢者人口が100万人になると予想されている、典型的な“少子高齢化都市”になりつつあるのです。

 
その横浜市政策局共創推進室の関口昌幸さんは、横浜市が抱える社会課題を次のように分析・整理しています。

 
「横浜市民を対象にした意識調査によると、『市民生活になんらかの不安を抱えている』と答えた人の割合が2000年代以降に急増しています。これは、これまで家族や企業といったコミュニティが担ってきた社会的なセーフティーネットが縮小・解体されつつあったり、病気や介護など、老後の生活に不安を抱える市民が増えてきたことに起因していると考えられます。

そのような中で横浜市はいま、『人口減少・少子高齢化』『老朽化する施設や余剰空間への対応』『産業経済を新しい視点でいかに活性化させるか』といった課題を抱えています」

 
さらに、イベントをサポートするThink the Earthが、コワーキングスペースの創造や外国人対応マニュアルの配布といった、横浜市がいま実際に行っている取り組みも紹介。ワークショップ冒頭から、熱心にメモをパソコンに打ち込んだり、ペーパーに書き取ったりする参加者が目立ちます。

 
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(Think the Earth理事の上田壮一さん)

 
また、今回の未来メディアキャンプのもうひとつの特徴は、国連が提唱する持続可能な開発目標『SDGs』の視座に立っていること。Think the Earthの上田壮一さんは、SDGsを前提に「議論の先にみえること」を踏まえて、次のように語ります。

 
「SDGsは、“誰ひとり置き去りにしない”というコンセプトを掲げているように、先進国と途上国が協力して取り組んでいかなければならない目標です。この目標を達成できていないという視点で見れば、日本もまだまだ途上国。SDGsが目指すゴールと今回の皆さんの課題がどのようにリンクしているかというのを、ぜひよく議論してもらいたいと思います」

 
『SDGs』の17の目標について、詳しくはこちら

2030年、どんな社会になっていたい? まずは“What”を考えよう

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(ブレストを行う参加者たち)

 
7つのチームそれぞれで、記者と参加者同士で自己紹介を終えたあとは、早速ワーキングに入っていきます。まずは解決する課題を明確にするべく、「2030年にはどんな社会になっていてほしい?」というテーマでブレストが行われました。

 
中でも「新しい働き方で横浜を元気にするには?」というテーマを掲げる「わくわくワーク」チームからは、「『ノー残業デー』『プレミアムフライデー』のような新しい働き方の目標を掲げられても、置き去りにされているような感覚。会社側にしかメリットがないんじゃない?」「働き方改革という言葉だけがひとり歩きしてしまって、一過性のブームになっているような印象」……などと、ホンネの意見が次々と飛び出します。

 
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(「わくわくワーク」チームの初期課題設定)

 
カギになったのは、大学生の参加者である石川瞳さんの「アルバイト先で社員さんたちを見ていても、楽しそうじゃない人のほうが多い。いまの子どもたちに“早く大人になりたい”と思ってもらえるような社会になってほしいです」という意見。そこから、「時間に制限されないで働ける」「副業が全面的に解禁される」といった具体的なアイデアがどんどん出るように。ブレストを経て、「“働き方=生き方”にするには?」という最初の課題設定が行われました。

 
さらに、課題設定のシートには、チームが設定した「問い」がSDGsの17目標のうちの、どれに関連するか、SDGsの目標ロゴを貼って表すという意欲的な試みも行われました。

アイデアをグルーピングし、“How”を考える

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(アイデアのグルーピングに取り組む参加者たち)

 
ワークショップでは次に、ブレストで出たアイデアをグルーピングし、どうすればそのアイデアが実現されるか(=“How”)を考えていきます。

 
ブレストで93個ものアイデアが出たのが、「農業で横浜を元気にするには?」をテーマに掲げる「サエグサショージ」チーム。変わったチーム名の由来を聞くと、参加者である三枝峻宏さんが、今回解決を目指す課題のペルソナにぴったりだったからだそう。

 
「私の祖父が昔、実際に横浜で農家をしていたんですが、いまはやめてしまって農地を有効活用できていないんです。私自身も、いつか横浜で農業に携わる仕事をしてみたい気持ちはあって。そんな話をチームメンバーにしたら、祖父の名前がチーム名になりました(笑)」と三枝さん。

 
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(「サエグサショージ」チームのグルーピング)

 
具体的なペルソナが目の前にいるからこそ、アイデアがめまぐるしいほどに飛び交い続けたサエグサショージチーム。チームの議論をサポートする「メンター」役の慶應義塾大学SDM研究科の学生から「アイデアは『どうしてそれをしたいのか?』という“下心”でまとめることで、意見に多様性が生まれる」というグルーピングのコツが伝えられると、チームメンバーは「好きなものをつくりたい」「作業が面倒くさい」といった気持ちに基づくグループごとに、各々のアイデアを手早くまとめていきます。

 
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(「実現可能性」と「社会的インパクト」をもとに分類されたアイデア)

 
「農業をするとポイントやマイルが貯まる」「作業工程を細分化し、スポットで手伝える」……アイデアをもとにした、具体的な“How”の提案もテンポよく進んでいったサエグサショージチーム。その手が止まり始めたのは、“How”を「実現可能性」と「社会的インパクト」の縦軸・横軸で切り分けた4エリアに分類するフェーズでした。

 
「アイデアが出すぎた分、分類するのが難しい」と頭を悩ませるチームメンバーが出てくると、一般参加者のメンバーに代わって、農業に関わる取材経験の豊富な山村哲史記者がアイデアの分類をリードしていきます。

 
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(体験スケッチボード)

 
分類が終わると、各チームで今回フィールドワークやデータ収集を行うアイデアが数個まで絞られ、そのアイデアに関わる人たち(ステークホルダー)の洗い出しと、実現化したアイデアの利用者の体験スケッチボード(カスタマージャーニーマップ)作成が行われました。

「アイデアが実現したら、人生を変えるかもしれないというワクワク感がある」

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(1日目最後の成果発表の様子)

 
最後に、各チームごとに課題の解決方法をひとつのストーリーにまとめたスキット(即興演劇)の披露が行われる予定でしたが、残念ながらこの日は台風が接近し、天候の悪化が心配されたため、プログラムが短縮されることに。

 
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(1日目最後の成果として、「農業シェアリングと生産物のマイクロ流通」というアイデアを発表した「サエグサショージ」チーム)

 
このためスキットの代わりに、各チームが現時点での成果発表を順番にスライドなどを使って行い、発表に対して他の6チームからのフィードバックを得たところで、未来メディアキャンプ1日目は閉幕となりました。

 
1日目のプログラムを終えて、参加者たちは「もっと時間がほしかった!」と声を揃えつつも、次のように感想を語りました。

 
「今後のフィールドワークやデータ収集を通して議論が深まっていくのが楽しみです。自分自身がこれから起業をしようと思っているので、“働き方改革”はとても身近なテーマ。チームメンバーも大学生から記者さん、社内でダイバーシティ推進に取り組んでいる方など実にさまざまなので、多様な意見を聞けるのは嬉しいですね」(わくわくワーク・佐藤雄二さん)

 
「アイデアの拡散で話が盛り上がった分、収束では少し難航しました。私たちのチームは三枝さんという具体的なペルソナがいたので、アイデア実現のためのイメージもたくさん出せたのがよかったと思います。なによりも、これからこのアイデアを具現化してゆくことで、彼の人生を本当に変えるかもしれない、というワクワク感があります」(サエグサショージ・佐々木隆さん)

 
参加者は11月に開催される2回目のワークショップに向けて、チームごとに1ヶ月の間フィールドワークやデータ収集を行い、アイデアのアウトプットを固めていきます。優れたアイデアは、朝日新聞社のクラウドファンディングサービス「A-port」で出資を募ったり、新たな担い手を得て事業化を模索したりと、実際の社会課題解決につながるアクションにつながる可能性を秘めています。

 
横浜の街をもっとよくしてみたい、という参加者の意気込みからは、どういった新しい未来が描き出されるでしょうか。未来メディアキャンプ2日目のアウトプットを、楽しみに待ちたいと思います。

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